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タイトル No.09『梔子亭の用心棒』
物語No 44
語った日 : 2003/07/23(Wed) 11:10
PC名 “マスター”プレッツェル(NPC)   <lints@mb.infoweb.ne.jp>
その夜は、ちょっと約束事があった。
先日、とある仕事を依頼したときに派生した、調べモノの結果がもたらされたからだ。
ほどなく、扉が開かれる。現れたのは3人。
ブルノルフにエイミ、そしてフィオナ。皆、梔子亭の常連の冒険者だった。

「やあ」
軽く挨拶して、座るように促す。注文を待ちつつ、3人の前に『例のモノ』を置いた。
茶色の小さなビン…中には正体不明の粉状のもの。
この薬が何なのか、今夜はそれを教える約束だった。

「それにしても、この前の捕り物は大したものだった、な」
ふと、私が依頼した『仕事』を思い出し、話しかけた。

タイトル 捕り物作戦
物語No 45
語った日 : 2003/07/24(Thu) 17:08
PC名 ブルノルフ・コッボ
「ジン……あ、ん。ウィスキーを」
 
目の前に置かれた茶色の瓶を見て注文する酒を変えた。ほろ酔い気分になるのは女将から話を聞いた後でいい。
 
>「それにしても、この前の捕り物は大したものだった、な」
 
女将にそう話しかけられ、少しだけ気恥ずかしくなった。やはりジンにすべきだったかな。
 
「あのときは手こずって。それでもなんとか役目を果たせて嬉しいよ。まぁ、もっぱら活躍したのは彼女たちなんだが」
 
わたしは、隣に座ってる神官戦士のエイミと、その奥にいる半妖精の精霊使いフィオナを見た。
先日、わたしたち3人は女将に用心棒を頼まれ、ある男を捕らえたのだ
その巨漢の戦士は、酔って暴れたところを女将に追い出されて以来、毎晩のように店へ現れ、嫌がらせをしてたそうだ。
  
「その男の人相を女将に教わったわたしたちは、店近くの路地で奴を待ち伏せることにした。
私たちには作戦があった。
エイミが囮となって奴に声を掛けさせる。
奴が下心を出して不埒なまねをしようとしたところで、わたしが現れる。
奴を軽く挑発し、わざと襲わせたところで、取り押さえる。
取り逃がしそうになったときに備えて、フィオナを待機させておく。
というものだった」
 
話しながら、わたしは頬をさすった。大男の膝が当たった場所だ。
まったく、とんでもない暴れん坊だった。
 
「待ち伏せの成否は、早い段階で相手を見つけることだと思う。
わたしとフィオナは夜目が利き、耳もいい。本当に得意なのは野や森なんだけどね。
待ち伏せの場所から少し離れたところで張り込みをしてると、奴が歩いてくるのが見えた」
 
ウィスキーを一口。
 
「奴が現れたと、フィオナは待ち伏せ場所にいるエイミに報せた。
大声を出した訳じゃない。風精霊の力を借りた風の声、だったよな?」
 
フィオナに確認する。
 
「で、フィオナは素早く戻って待機場所に隠れ、わたしも裏道を走って戻り、エイミの姿が見える建物の陰に隠れて奴を待った」
 
そこから先はエイミに語って貰おう。

タイトル 作戦実行!
物語No 46
語った日 : 2003/07/25(Fri) 18:33
PC名 エイミ・ライト
「そういう訳で、あいつが姿を現したころにはこっちは準備万端整ってたんです。
 あたしもいつものいかつい板金鎧じゃなく、たっぷりした神官衣の下に硬皮鎧なんて軽装で」

話を引き継いだあたしは、ふふっと笑って、プレッツェルさんにウインク☆
彼女にはわかるだろうけど、軽装、とか言っても、たとえばエルフや魔術師の人には着られないくらい重たくて硬いシロモノなんだよね。

「フィオナさんの『声』を聞いたあたしは、何気ないふうを装って堂々と梔子亭に向かったんです。
 案の定、女一人と侮ったんだか、あいつはすぐに食い付いてくれました。
 だから打ち合わせ通り、あいつがあたしの腕を掴もうとしたときに『なにするんですか! やめてください!』って大声を上げて、ブルノルフさんに合図したんです」

のちのちの事を考えると『梔子亭からの依頼』ってことは伏せた方がいいってブルノルフさんの助言で、あたし達は向こうから手を出してくるように仕向けた。
ブルノルフさんは通りすがりの善意の助っ人だ。

「あいつは最初は、ブルノルフさんだけを片付ければいいと思ったらしいです。
 あたしも向こうが暴れ出すまで手は出しませんでしたし。
 だから、あたしが本気で殴りかかった時は、随分驚いてました」

あたし一人で相手をしたら、勝負はどっちに転んだかわからないくらい、戦いの技量はともかく体格と腕力にだけは恵まれた奴だった。
もしかしたら1対2でも、運が悪ければ負けたかも知れなかった。

「でも、あんなことをするような奴にしては、随分早く逃げ出したんですよね。
 街のちんぴらでも、もうちょっと粘るんじゃないかなぁってくらいに」

お互い、刃物を出した訳じゃない。
そりゃあ拳やメイスが当れば痛いけど、命まで取る気がないのは明白だったのに。

「逃がさずに済んだのは、フィオナさんのおかげです。
 ‥‥その小瓶の件もね」

あたしはエールのジョッキを軽く掲げて後をフィオナさんに任せた。

タイトル 乱闘の終わり
物語No 48
語った日 : 2003/07/25(Fri) 21:42
PC名 ”巡る風”のフィオナ
「わたしはお二人に比べたら、大したことをしたわけじゃないですけど」

わたしは当時の状況を思い浮かべつつ、エイミさんからお話を引き継ぎました。


「彼が姿を現したと風の声でエイミさんに伝えた後、わたしは物陰をつたって
ブルノルフさんの後方に回り込みました。万一取り押さえられなかった場合に、
足止めするのがわたしの役目でしたから」

いざ乱闘が始まると、わたしは物陰でひやひやしながら様子をうかがっていました。
相手はとにかく膂力があって、お二人を相手に引けを取らず暴れていたのですから。

「結構ひどい乱闘でしたよね、まだ痛むんですか?」
わたしは頬をさするブルノルフさんに目をやりました。ブルノルフさんの顔面に
膝蹴りが入った時など、思わず梔子亭の入り口のランプから火の精霊を呼び出し
そうになったものです。

「でも騒ぎを聞いた野次馬の声が聴こえてきた途端、彼は逃げ出してしまいました。
やはり、どこか心にやましいところがあったのでしょう。彼がわたしに気付かず前を
通りすぎる瞬間、わたしは脚を狙って投げ縄を投げました。縄は狙い通り両脚に
絡み付いて、彼は思いきり顔から転んでしまいました」

あの体重で勢いよく顔面を打ったのです。さすがにちょっと気の毒になりましたが、
これも仕事ですから見逃してあげるわけにいきませんでした。

「彼はひどく慌てて脚の縄を解こうとしていましたが、片方の手は懐に入れて、
何かを確かめているようでした。それで、何か変だと思ったんです。もしかしたら
短刀でも隠し持っているのかと。ブルノルフさんとエイミさんが彼の両腕を押さえた
隙に、わたしは懐を探ったんです。すると出てきたのは小さな包みで…」

話しながら、わたしは目の前の茶色い小瓶を指しました。
彼の持っていた包みの中身がこれでした。瓶の中には何かの粉が入っています。

「わたしがその包みを取り出した時の、彼の取り乱し方は尋常ではありませんでした。
なにしろあれだけ粗暴だった人が、真っ青になって「やめてくれ! まだ死にたくねえ! 
助けてくれ!」などと喚きはじめたのですから。それで、わたしはブルノルフさんに
入れ知恵したんです」

ね、とブルノルフさんに微笑みかける。

「ブルノルフさんはなかなか演技が上手いんですよ。『黙っておとなしくしていれば殺さんさ。
それより、これ以上騒ぐと衛兵に突き出すがその方がいいか?』と凄みを利かせたんです。
彼はそれですっかりおとなしくなりました。それでエイミさんが苦もなく縛り上げて、
ここに連れてきたというわけです」

捕まえた男が間違いなく嫌がらせの張本人だとマスターに確認した上で、わたし達は
彼と小瓶の処置をマスターに任せました。彼はゴーバで荒稼ぎしたあと、この街に
流れてきたそうですが…。どんな事情でこんな事になったのか、今ひとつはっきりしません。

わたしは一息ついて甘口のワインで喉を潤し、再び小瓶に目を移しました。

「…結局、この粉は何だったのですか? それに彼は、あの後どうなったんでしょうか」

タイトル 薬の正体
物語No 49
語った日 : 2003/07/27(Sun) 12:03
PC名 “マスター”プレッツェル(NPC)   <lints@mb.infoweb.ne.jp>
三人の捕り物話は、そりゃあ見事なものだった。
あの大男と素手で渡り合ったんだ、なかなかどうして、大したもんさ。
多少の被害は出たようだが、最後は綺麗にまとめ上げる。
冒険者の仕事の見本みたいなもんだったね。

>「…結局、この粉は何だったのですか? それに彼は、あの後どうなったんでしょうか」

「そうだ、な」

『それより、これ以上騒ぐと衛兵に突き出すがその方がいいか?』
ブルノルフが男を黙らせた脅し文句。しかし、衛兵に突き出された方がマシだったかもしれん。
あの男の行き先は、シーフギルドだった。ただの薬で三人が話したような態度を取るわけがない。
そう思い、薬共々引き渡した訳だが…

「ただの暴漢なら、お灸を据えられて放免されただろう…が、持ち物のせいでちょっとややこしいことになって、な」

「瓶の中身は、何種類かの薬草を調合したもの。微量を皿に取り、お香のように焚きあげるものさ
ただし、今は煙いだけで何の効力ももたらさない。…今のところは、な」

「薬と言ったが、用途は病気を治すもんじゃなくてね…命と引き替えに甘い夢を見せる。
最終的には、それを目的として作られてる。これはその試供品ってヤツだな」

「これはあいつが雇われてた連中が持ち歩いてたそうだよ。
そいつらは空き家をアジトにしてた…金払いは良かったが得体の知れない連中らしくて、途中で仕事を抜けたって言ってた。
その際、あいつがこっそり持ち出したらしくてな。
別の土地で金に返るつもりだったか、いざと言うときの保険にでもするつもりだったのか」
それは分からない…知るつもりもないが、な。

「あいつを雇った連中のこともよく分からない。居場所も点々としてたようだし…」
ゴーバの連中が踏み込んでも、今頃はもぬけの殻だろうな。ため息をつく、ジョスランの様子が目に浮かぶようだよ。

「この話が、これで終わるとは思えんよ」
あのハルトを襲ったモーリスってヤツも、沈黙の市で集めてたのは薬草、毒草の類だったという。
この問題根が深そうだ、な…全く、世に悪行の種はつきまじってやつか?

「…だから冒険者は仕事にありつけるってもんだがな」
そう言って、私は肩をすくめた。