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投稿時間:2002/10/05(Sat) 02:33
投稿者名:GM
Eメール:lints@mb.infoweb.ne.jp
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タイトル:
神の懐にて:マーファ神殿(アルバート、セバスティアヌス、ラクシェス)
神殿に一番最初に到着したのはセバスティアヌスだった。
がらんと広い礼拝堂は、祭壇の両脇にそれぞれ扉が着いている。扉に挟まれるように、大地母神マーファの祭壇が設えられていた。

出来たばかりのパンと共に礼拝堂に入った彼は、祭壇に背を向けて俯くアーガットを見た。
たくさんのロウソクが灯り、明るいはずのそこに佇む彼の、深い孤独に満ちた姿は、どこか寒々しくみえる−−−。

しかし、気配に気づき
「ああ、セバスティアヌスさん」
と、顔を上げたアーガットは、優しげな笑顔を浮かべていた。
「パンが出来たのですね。ありがとうございます。それを、この台の上に置いてください」
セバスティアヌスを手招きし、祭壇の前にパン籠を置かせた。
「いい香りです。女将さんのパン作りの腕はまだまだ衰えてないようですね」
どこか懐かしげに話すアーガット。幼い頃のことを思い出したのだろうか。

そこへ、一度宿に戻って準備を整えたラクシェスが、少し遅れてアルバートとサイベル、そして銀髪のエルフが入ってきた。
サイベルはアーガットの姿を見るやぱっと駆け出し、抱きついた。
「どうした? 何かあったの?」
口調とは裏腹に、アーガットは厳しい顔つきでサイベルに尋ねる。
「変な人達に襲われたの。でも、アルバートさんとテムレンさんが守ってくれたから大丈夫…」
震える声で、それでもしっかりとアーガットの目を見て、そう伝えた。
「そうだったんだね…ありがとうテムレン。それから…アルバートさんも」
アーガットは感謝を込めてエルフとアルバートに礼を述べた。そして、ラクシェスとアルバートに
「僕はアーガット・ルリオンといいます」
と自己紹介し、さらに3人に
「彼は、冒険者仲間でテムレンと言います」
と紹介した。テムレンは軽く口元を歪めるように笑うと、礼拝堂の左側の扉へ入っていった。
アーガットも
「僕もどうしても外せない仕事が残ってますので…もうしばらくここで待ってて下さい。その間、パンとサイベルをよろしくお願いします」
と、三人に申し出る。そしてサイベルの傍に跪いて手を取り
「大丈夫。御女神がきっと微笑んでくださるから。希望を捨てないで」
囁くように励まして右側の扉へ向かい、その奥へ消えた。

後に残されたのは、ラクシェスとセバスティアヌスとアルバート。
そして身体を硬くして席に着いてるサイベルだった。

投稿時間:2002/10/06(Sun) 03:32
投稿者名:アルバート・バルバロッサ
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タイトル:
magic at twelve o'clock
「よっ」
礼拝堂の中には執事がいた。
そういや最近妙な宗教にハマってるらしい。
俺も幸運の燭台とか、怪しげなものを買わされないように注意しよう。
サイベルはというと、無事王子様のもとに辿り着き、めでたしめでたしといったところだ。
馬車馬の俺は鼠に戻る時間というわけだ。
「そうだったんだね…ありがとうテムレン。それから…アルバートさんも」
芝居がかった大仰さで腰を折る。
「僕はアーガット・ルリオンといいます」
「アルバート・バルバロッサだ」
テムレンは相変わらずだ。
ここまでほとんど何も情報を得ず、この仕事に貢献していない。
これから物語の核心へと迫っていける。そう思った。
「僕もどうしても外せない仕事が残ってますので…もうしばらくここで待ってて下さい。その間、パンとサイベルをよろしくお願いします」
そして再び俺は魔女の魔法で馬車馬に変えられた。
さながらあのパンは硝子の靴だろうか。
横を向くとラクシェスがいた。
馬車は二頭立てになったらしい。
逆を向いた。
執事がいた。
こいつはカボチャの馬車だろうか。
「大丈夫。御女神がきっと微笑んでくださるから。希望を捨てないで」
捨てないでということは、まだあるということだ。
そして多分それは、その意志さえあれば、最後の最後まで持っていられるものだろう。
優しい言葉をかけ颯爽と立ち去る王子様。
そして残された姫と二頭の馬と馬車。
俺は視線を右の扉からラクシェスに向け、執事に向け、サイベルに落とした。
「君には希望があるんだろ。
なら、それを大事にすることだ。
そうだな……盗賊ギルドで給わった、ありがたーい格言を一つ」
咳払いを一つ。
「“注意深くあれ。されど臆病になるな”
そんなにコチコチになった手じゃ、希望を落っことしちまうぜ?
今は大きな変化のときだ。
それはチャンスの到来でもある。
事態が好転するか否かの最後の鍵は、君自身が握っている。
正しい盗賊達ってのは、いつもその扉を開ける瞬間を待ち望み、楽しんでいるものさ」
緊張の面持ちのサイベルに、とりあえず俺は声をかけた。
守られる側にその自覚がないと守りにくい。そういうことにしておく。
執事から注がれているであろう視線を敢えて無視して俺は視線を扉に遣る。
三人のうちの誰かが行くか否か。
行くならば誰が行くか。
「行きたかったら行ってもいいし、俺に行けというなら俺が行く」
何をしようとしているのか、見届ける義務と権利くらいはありそうだ。
ただ、ここに二人は残しておきたい。
サイベルと二人で待つには、この礼拝堂はあまりに広すぎる。

投稿時間:2002/10/06(Sun) 07:27
投稿者名:セバスティアヌス
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タイトル:
右折
アーガット神官。
…どうしてこの青年からこうも…冷えた空気が感じられるのでありましょう。

>「いい香りです。女将さんのパン作りの腕はまだまだ衰えてないようですね」
昔を懐かしまれるご様子や、私を気遣われるお言葉には偽りのない優しさが伺えます。
毒麦の説明に耳にした…カーディスも女神でありましたので。
私は神経質に…些細な言い回し(決してマーファ様の名で祈られない)や…祭壇を背にする姿を…不可思議な事件の納得を得るためにこの誠実な青年を疑ってしまっていますのでしょう。申し訳なく思います。

> 「よっ」
アルバート様のご挨拶に黙礼でお返しいたします。
その後サイベル様を励まされるご様子に、非常に温かな感慨を覚えました。
このお方がこのように仰るお相手のサイベル様が魔女であるはずもございません。そう確信くださる行為が嬉しいものでしたので。
頬が緩んでしまうのは、この厳かな雰囲気には相応しくないやもしれませんが。

> 「行きたかったら行ってもいいし、俺に行けというなら俺が行く」
「私に行かせてはくださいませんか」
振り返らずに扉へ向かいます。

「アーガット神官、よろしいでしょうか?」
ノックもせずに扉を開いたのは無礼でありまりましょうが。
「私は神殿に在していたこともございます、お手伝いさせてくださいませんでしょうか」

投稿時間:2002/10/06(Sun) 12:18
投稿者名:GM
Eメール:lints@mb.infoweb.ne.jp
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タイトル:
ふたつの光景
▼セバスティアヌス

仲間達に背を向け、そのまま
>「アーガット神官、よろしいでしょうか?」
>「私は神殿に在していたこともございます、お手伝いさせてくださいませんでしょうか」
ノックもせず扉を開いたセバスティアヌス。

その部屋は、おそらく神官の執務室なのだろう。
簡素で掃除の行き届いた、広い部屋。季節の花が生けられ、ほんのり甘い香りを漂わせている。
壁に設えた本棚には、祭事の手順を記した本や、記録書が並んでいた。

その部屋をぼんやり照らすのは、部屋の奥の机に置かれたランプのみ。
淡い光の中で、席に着いたアーガットが書類に眼を通しているように見えた。
「セバスティアヌスさん…」
顔を上げたアーガットの眼が、微かに濡れている…?
急に入られるものですから、驚きましたよ…」
ノックの件をさして咎めもせず、冷静に振る舞うアーガット。
「あなたも神の愛を賜っておられるのですか? 申し出は嬉しいのですが、あなたの奉じる神がマーファ様でないのなら、お引き取りを願えませんか?」
柔らかい口調で、丁寧に断りを申し出る。
「明後日の祭りで、我々は女神をお迎えします…できれば、マーファ様を奉じるこの村のものと共に、それを祝いたいのです…。あなたがお客様として、ご一緒に祝していただけるのでしたら、いくらでも歓迎いたしますが」
薄暗い明かりの中、アーガットは儚げに微笑んだ。

▼アルバート、ラクシェス

広い礼拝堂に残されたアルバートとラクシェス、そしてサイベル。
緊張するサイベルに

>「“注意深くあれ。されど臆病になるな”
>そんなにコチコチになった手じゃ、希望を落っことしちまうぜ?
>今は大きな変化のときだ。
>それはチャンスの到来でもある。
>事態が好転するか否かの最後の鍵は、君自身が握っている。
>正しい盗賊達ってのは、いつもその扉を開ける瞬間を待ち望み、楽しんでいるものさ」

そう言って励ますアルバート。
彼の言葉に静かに耳を傾けていたサイベルの口元に、柔らかい微笑みが浮かんだ。
「海賊さん、ありがとう…私がもう少ししっかりしないと駄目なのね」
肩の力が抜け、少し落ち着いたように見えた。
「…ケーゼ先生やアーガット…それにアルバートさん…私を支えてくれる人達の為にも…」

自分を力づけてくれる人がいる。それが大きな心の支えになる。
昼間、畑で初めて彼女と対面した時より、ほんの少し、彼女の言葉に力がこもったようにも思えた。
やがて、礼拝堂に村人が一人、また一人と集まり始めた。パンが出来たことを、宿屋の女将から聞いたのだろう。
じきに礼拝堂は村人でいっぱいになる。村長もそろそろ来る時間だ。

投稿時間:2002/10/06(Sun) 22:29
投稿者名:ラクシェス=アイレスバロウ
Eメール:hinabe@excite.co.jp
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タイトル:
残るはあっちか。。。
 パンが出来てるってことで、神殿見学用の武装を整える。ちょっと大袈裟かな。というくらいがポイントなのだ。
 おれは、盾を背負い、剣帯には魔法の鞘とブロードソードをつけておく。盾は、いざって時に、誰かを守れそうだから。鎖帷子は。。。動きやすさを取って着ないでおく。そして、皮鎧の留め金、ブーツの紐を入念に確認。ポケットには、光晶石。
 仕上げは神官服。武装解除されにくいはずっていう打算もあるけど、やっぱり神聖な場だし、神様の顔を立てといて、損はないだろ。

 神殿に着き、儀式の準備状況をぐるっと見回す。祭壇の様子など、おかしなところはないか、確認しておく。

>「…ケーゼ先生やアーガット…それにアルバートさん…私を支えてくれる人達の為にも…」
 思ったよりしっかりしたサイベルの対応に、少しほっとする。
 でも、気掛かりなのは、彼女だけじゃないんだよね。
「それから、何よりも、あんた自身の幸せの為にも、ね。
 自分を支えることが出来れば、他人だって支えることができるんだから」おれは、右側の扉の動向をちらと見遣り、個人的にもう一方の潜在的な魔女だと思っているアーガットのことを思って言った。

 村人たちが増えてきたら、サイベルのことはアルバートに任せ、テムレンの消えた左側の扉に向かう。勿論、ノックするつもりはない──カギ、掛かってるかな? だとしたら、アーガットが入った右側の扉に向かうとしよう。
 開けば、「あんたの友人について、話があるんだけど。。。」くらいで切りだして、アーガットが何であんなに悲しそうな顔をしてるか、心当たりがないか尋ねるつもり。ひょっとして、本人も気づいてないかもしれないしね。

投稿時間:2002/10/07(Mon) 02:50
投稿者名:セバスティアヌス
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タイトル:
動揺
>「急に入られるものですから、驚きましたよ…」
「失礼いたしました」
先ほどと変わらない態度を心掛けます。アーガット様も悟られたくはございませんでしょう。

>「あなたも神の愛を賜っておられるのですか? 申し出は嬉しいのですが、あなたの奉じる神がマーファ様でないのなら、お引き取りを願えませんか?」

「私はマイリー神に仕える身でございます」

>「明後日の祭りで、我々は女神をお迎えします…できれば、マーファ様を奉じるこの村のものと共に、それを祝いたいのです…。あなたがお客様として、ご一緒に祝していただけるのでしたら、いくらでも歓迎いたしますが」

「はい、是非ご一緒に祝したく思います」

「ですがアーガット様が前々日からそのようにお疲れでは、無事に祝えるのであろうかと不安を覚えてしまうのでございます。
ライ司祭の不在の今、儀式を執り行えるのは貴方様だけでございましょう?ご無理をなさらず、私をお遣いください」
気が付きますと既に習慣を抑えきれずアーガット様とお呼びしています。

「それとも司祭様はお祭りに合わせてお帰りになるのでありましょうか?」

「儀式とは別の雑務でお力にはなれませんでしょうか?」

「こちらは村長から頂いたものです。私はあの方にとっては都合のよい人物でありますから、監視も多少は緩いでしょう」
革袋を差し出し。アーガット様へお見せします。ご軽蔑なされるでしょうが、致し方ございません。

投稿時間:2002/10/07(Mon) 12:55
投稿者名:GM
Eメール:lints@mb.infoweb.ne.jp
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タイトル:
自らを偽る時
セバスティアヌスの差し出した皮袋を受け取ったアーガット。その重さと、ちゃり、と言う音に、眉を微かにしかめた。
「君は…」
言いかけて、しばらく考える。そして
「あなたは正直な方だ。これを受け取る時、とても心苦しかったのではありませんか?」
ふっと微笑んで、セバスティアヌスをねぎらった。
「人間は生きていると、時に自分を欺かねばらならいことがあります。それも頻繁に…。
その時の苦しさや痛みは、誰もが覚えるものなのに、他人にはそれが分かるものではないのです」
そして、革袋をセバスティアヌスに返した。
「これは貴重な証拠品となるでしょう。どうぞ、あなたの心のままに使ってください」
責めるでも、軽蔑するでもなく、アーガットはそう言った。
「村長はいずれ、彼にふさわしい罰が下るでしょう。役人の目はごまかせても、神の目を欺くことは出来ません。そうですよね、セバスティアヌスさん」

「ご心配をおかけしました。ただ…見ての通り、小さな村の祭りです。実際、充分手は足りていますからご安心ください。
僕自身も、小さい頃から見慣れてますし、代々の司祭様の記してくださったものもあります。
僕は、その通りに行うだけですから…大丈夫ですよ」
と、にっこり微笑んだ。
「僕よりも、サイベルのことを…お願いします。賊に襲われたと聞いて…少々動揺しました…。
アルバートさんが居て下さって、本当に助かりました」

「さあ、そろそろ礼拝堂に参りましょう。明後日の祭りの為には、どうしてもやらねばならないのですから」
と、アーガットはセバスティアヌスを促し、自らも席を立った。