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38.非常階段に座る人の話

その会社に勤めて数年後、新社屋が出来た。
五階建てで、見た目は白くて明るい建物だった。しかし中はどの部屋も妙に暗い感じがした。
でも特に怖い感じはしなかったので、そのまま気にせず仕事をしていた。
ある日、定時で引ける時、ごった返すタイムカート前で数人の同僚と話し込んでいた。そこは非常階段の入り口の前でもあったのだが、
「ああ、あそこに人が座ってるよ」と、女の子の一人が指さした。指された先は上階へ繋がる階段があった。
そこに、白い影が階段に腰掛けているのだと云う。残念なことに、いくら目を凝らしても、私には見えなかった。
39.お札の話

実際、そのビルには「白い影」と「黒い影」の二つか棲んでいた、という噂があった。そして「白い影は悪意はないが、黒い影を見たら悪いことが起きる」という噂も耳にいたことがある。徹夜している時、ドアの磨りガラスの向こうにうろうろする人影が写り、開けてみると誰もいない…そんな話もあった。
そして私も仕事をしていた訳で、当然毎晩遅くまで残業をしていたのだが、ありがたいことにナマの影にはお目にかかったことがない。

ただ、影とは関係ないが、「めっちゃ怖かった〜」な経験はある。
ある仕事に携わっていたのだが、ちょっとうまくいかないことが立て続けに起きていて、その時、チームにいた女の子が近所の神社でお札をもtらって来た。それをドアの上に張り付けて、数日が経った夜。
その日もやはり残業していたのだが、主任と私が、たまたまトラブルの話をしていたのだが、
「でも、お札があるからもう大丈夫だよね」と私が話してお札を見た瞬間。

ひとりでにぺろ〜んと剥がれて、床に落ちた。

接着力が弱かったのだろうが、あまりのタイミングのよさに、一瞬、部屋中がシーンとしたのだった。
40.入ってくる人影の話

でも、考えてみれば、一度黒い影を見たた事があるかもしれない。

そのビルの最上階はホールやミーティングルームになっていて、その一角に6畳の和室があった。徹夜した社員の仮眠所にも使えるようになっていたようだが、いつ来ても人の気配はなく、真新しい畳の匂いか気持ちいい部屋だった。

ある時、体調を崩して、昼からそこで布団を敷いて寝ていた時がある。慣れないところ、というものあるが、「いつ社長がが来るか分からない」てな、ミョ〜な緊張感もあり(以前も体調を崩してここで寝てたとき、たまたま入ってきた社長に見られたことがある。その時の社長は「休んでていいよ」と、すぐ退出してくれたのだが、やっぱどきどきするもんだ)いまいち寝付けなかった。

それでもうつらうつらし出した頃、襖の開く気配がする。同時に金縛りになる。薄目を開けると黒い影がゆっくり入って来て、寝ている私の方へ歩いてくる。
気持ち悪い、と無理矢理目覚めると誰もいない。
そのまままた眠くなる、金縛りと同時に襖を開けて黒い影が入って来る。無理に起きる…を4,5回繰り返した気がする。一回は身体の上に乗っかかられたかもしれない。怖くはなかったが、無性に気持ち悪かった。
そのまま夕方になり、定時になった時点で家に帰った。その後、特に変わったことは無かったけど。
41.闇の中の手の話

これは別部署の男の子の体験談を、友達だった女性から聞いた話。
製品の最終チェックを暗室に籠もってやっていたある人のこと。ゲームのコントローラーを手にしていた彼、左手はレバー、右手でボタンを叩いて作業をしていたのだが、その左手を、誰かに触られた。

目には見えない。左手に、自分の右手で触れることも出来る。
でも、包み込まれるように握られる感じはある。

「あの手なあ、女の人や思うわ」
と、彼は言ったそうだ。
42.男の人の話し声の話

それからしばらくして、私は別部署へ異動した。ビルも隣の3階建ての方へ移り、環境も仕事内容も一新した。そんな中で今も腐れた縁が続いてるZ姐と知り合った訳だが、この話は彼女も立ち会った変な体験。

その日定時を回って、残業を抱えた私や主任が、自分の席で休憩を取っていた。部屋の関係上、その部屋の机は横一列に並んでいた。当時、私は主任の隣に居た。Zも届けられる雑誌目当てに来ていて、ちょっとほっとした雰囲気になっていた。

電話が鳴ったので、本を読みながら応対していた時、背後で男の声がした。「ふっ」とため息をつくような、そんな感じだった。
声が太かったので、その時はてっきり主任だと思っていたのだが、受話器を置いた瞬間、その主任が怪訝そうに
「今、何か言わなかったか?」と、一言。
へ?主任じゃなかったの??
すぐ後ろにいたZ姐も、当然知らない。
一体何だったのか、今でも分からない。狐につままれたような気がした体験だった。

ただ、その階そのものが「溜まりやすい」らしく、夜中、誰もいない部屋からキーボードを叩く音が聞こえる、という類の話もよく聞いた。

15話の、A君が高野山に連れて行った自縛霊が居たのもこのビルのトイレである、と後で訊いた。
43.おまけ:挨拶の話

同じ会社で、とある女性から訊いた話。

その人は一人暮らしをしていたのだが、何も喋らない生活はやっぱり寂しい。
そこで、出がけに「行って来ます」、戻りに「ただいま」と言うことにした。
誰もいない部屋だが、それだけでもだいぶ気が紛れるから、と言っていた。

ある日の夕方、り会社から戻り、いつも通り「ただいま〜」と声をかけた。すると、誰もいない部屋から声がした。

「おかえり」

その人は喫茶店に飛んで逃げ、しばらく戻れなかったそうだ。


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