BACK HOME NEXT








12.「後ろの人の定義」の話

「これだけは書いといてな」と、A君に頼まれた話。

「後ろの人」と訊いて想像するのは、よくマンガとかに出てくる「人物の後ろに浮いている状態」なんだが、
本当は違うそうだ。
一言で言えば「ベクトルの違う次元に存在しているだけ」であり、その場にいるように見えて、実は同じ場には居ないという。だから、日や体調によって後ろに見えたり、前にいたり、時には重なって見えるそうだ。

また、彼らに距離は関係ない。その場に居るように見えて、実は居ない。

それが、一般的に「後ろの人」と呼ばれてる存在の所在なのだ…そうです。

13.金色の狐の剥製の話

さて、本題。A君の友人の話である。仮にB氏とします。

彼もまた「見える人」であり、その能力を生業としていたが、ある日、その彼からA君の元へ電話が入った。
曰く「ある仕事を済ませたんだが、ちょっとやばいモノに憑かれたらしい」とのこと。

彼の元に行ったA君が見たもの。
それは、首から背中にかけて、たてがみ状に動物の毛が生えているB氏だった。直感的にA君は、B氏に影響しているものが「神系」のもので、かなり危険な存在だと悟った。話しかけても唸るばかりで答えがない。この場合、二通りの事態が考えられる。

ひとつは、言葉を解する知能を持っていない場合。
もうひとつは、人語は理解できるが、何らかの理由で応えない場合

前者は力で押さえ込むことが可能だが、後者はかなりやっかいで、下手をすれば命に関わる。A君は、B氏に影響を与えている存在が後者ではないかと考え、とりあえずB氏から何とか話を訊き出し、仕事を依頼したと云う家に向かった。
家に近づくと膝に力が入らず、立てなくなりそうになる。「何か大きな力場が出来ている」と察したそうだ。何によって力場が築かれていたかは、家へ到着して分かった。家の要所に四神獣を奉ってあったのだ。家人がそういうのが好きで、自分で調べて、飾ったという。他にも、蔵の中には仏像がたくさんあった・趣味で集めているそうだ。
ただ、A君の見立てでは、これらの仏像には何も「入って」なかったという。

他に何か無いかと問いただし、家人はしぶしぶだしたもの。それが、金色の毛をした狐の剥製だった。実は他にもあったのだが、B氏の忠告で全部焼き捨てたという。ただ、その狐の剥製だけ、あまりにも惜しいので、そのままにしておいたと云うのだ。この狐の「何か」が、四神獣の結界に影響され、それがB氏に害を及ぼしているのではないかと考えたA君は、剥製を持って、結界の外に出ようとした。

出た瞬間、ガラスで出来たキツネの目がポロリと取れ、中から小さな蛇が出て来て庭へと逃げた。

A君は蛇を封じた後、改めて四神獣で結界を張り直して、その家を後にした。戻ってみると、B氏はすっかり元気になっていたそうだ。

「獣の毛も、蛇も、本当は見えないものかもしれない。エネルギーがそういう形になって現れただけだから、
存在しないもかもしれない。でも、狐の目が取れたのは本当だよ」と、A君はそう言った。

14.「ホトトギス」の話

「ホトトギス」と云っても、鳥の話ではなく、そう呼ばれる「存在」の話。これはA君の師匠の、2,30年前遭遇した不可思議な出来事である。

当時学生だった師匠氏は、ある定食屋へよく通ってた。そこで働いていた一人の女性が、妙に気になって仕方なかった。なぜ気になるんだろう。しばらく考えた末、ひとつの事に気がついた。

その女性の目は、人のものではなかったのだ。「ホトトギス」に憑かれてるのかもしれない、師匠氏はそう思った。

「ホトトギス」に憑かれると、憑かれた本人が様々な不幸や諍いを喚んでしまうのだと云う。師匠氏は事情をその女性に話し、「お金はいいから祓わせてくれ」と頼んだ。しかし、女性の返事は「いいえ」だった。

それを繰り返すうち、女性の父親が事故で亡くなった。
師匠氏は、「ホトトギス」や女性のことを調べてみた。男性関係や環境から、「ホトトギス」が憑いた可能性もあるからだ。しかし、女性の身辺には、そういった事はなく、女友達がいるだけの、ごくごく普通のものだった。

ある日、街中でその女友達にぱったり出会った。師匠氏は何か解るかもしれないと思い、友達に「ホトトギス」のことを話してみた。すると、彼女は「私が『ホトトギス』かもしれませんね」と言った。

話によると、女性と女友達は生まれた日時も一緒、同じ村、同じ学校で育ち、今も共同生活を送っていると云うのだ。その日の話はそれきりで、また「ホトトギス」について色々調べていた師匠氏の元へ、後日、ひとつの知らせがもたらされた。

女性が焼死したというのだ。

そして定食屋では、「その女性は最初から存在しなかった」ように、人々の記憶から消え去っていたという。

「ホトトギス」が何であるかは、今もって解らない。ただ、A君が云うには「そいつ強いわ。俺ではアカンかったと思う。師匠やから、やれたんや」と、付け加えた。

15.「キチョウ」の話

いままでいろんな話を紹介してくれたA君だが、実は高野山での修行経験があるのだ。当時、ごんたくれだった彼に手を焼いた父に放り込まれたらしい。
「師匠氏」とは、そこでお世話になった方であり、今も交流がある。
先日など、「IMAC買ったけど、よく分からない」と電話があり、A君は高野まで出向いて接続しに行ったという。

さて、A君の修業時代の話だが。彼は一人の女の子の霊になつかれてしまった。名は「キチョウ」。漢字等は分からないので、そのまま「キチョウ」と呼ぶ。姿は見えないが、気配はある。
例えば夜、「そろそろ寝ようかな」と思ったら、布団が敷かれている。「ありがとう」と言うと、バタンと戸を閉め、クスクス笑いながら廊下を走って行ったとか、そんな事がしょっちゅうあったと云う。
特に害を及ぼすものでもなく、かわいいと思っていたA君だが、修行が終わって下山する時にはいろいろと妨害され(バイクを隠されたり、閉じこめられて大の男5人がかりでもなかなか開かなかったとか)、結局下山は一月遅れたそうだ。

その「キチョウ」、今でもA君のことが好きでいるらしい。
A君「時々メール送ってくるで」 私達「はぁ? 『キチョウ』が?」
A君「師匠せっついて、メール書かせるんや。師匠に『キチョウ何とかせい』って言われてもなあ…」
と、ちょっと困った感じで、A君。

そういえば、先日高野へ行った際、会社のトイレに前にいた自縛霊の女の子を無理矢理引き剥がして連れて行き、「キチョウ」に逢わせたそうだ。そのとたん、二人して猛ダッシュで走り去り、それきりだったらしい。

…友達になったんだろうか…。

16.おまけの話

この話の最中、不意にA君が同席していたZ姐に「なあ、備前長船って知ってる?」 と、問いかけて来た。
いきなり何かと思えば、どうやらZの後ろの人…例の武将さんが、寄ってくる有象無象を払うのに使いたがっているらしい。

「知ってるけどなあ…私らに買える代物ちゃうしなあ…」
名刀は一降りン百万する。そんな話をしていたら、いきなりA君が笑い出した。

「拙者、長船でなければ、『うーじー』でも良い」…と、のたもうたそうだ。

機関銃で掃射したいほど、寄って来てたらしいっぽい・・・。A君曰く、「彼はその時代の人にしては珍しく好奇心旺盛」なのだとか。

機関銃の話も、きっとZの部屋にいるG.Iジョー達に話を訊いていたに違いない、だそうだ。



BACK HOME NEXT