TOP NEXT→








01.守護霊様の話 その1

まず断っておくが、私はその手のものは「見えない」。 そいうい類の話は好きで「ほんとにあった怖い話」も愛読しているが、見えない体質である。感じることはあっても、姿は分からない。

これは、私の友人A君から聞いたものである。

彼とのつきあいは長いが、「見える」と判ったのは知り合って数年経ってからのことだった。その時、私は前から興味あった「自分の守護霊」の姿を聞いてみた。彼はしばらく私の背後をじっと見て、やがて一言。

「検非違使(けびいし)やで。それもめっちゃ美形の」

A君の話では、どうも私の先祖筋で、おだやかな人格の上、武術と学問に秀でていたとのこと。この時(後ろの御仁には申し訳ないのだが)大笑いしてしまったのだ。なんて華やかな設定!イマドキ流行のファンタジーを地でいくではないか。

名前を聞いてみたが、後ろの人は微笑んでいるだけで何も答えなかったそうだ。とりあえず、私とZは(A君の「可愛そうだからやめたれ」の忠告も虚しく)「ケビー」と呼ぶことにした。
そう、検非違使だから「ケビー」。単純明快な論理である。

ケビーはそれから数年間、私の後ろに居た(らしい)。
が、去年(98年)の秋、病気で手術をした時から居なくなってしまったそうだ。護ってる人間が大病を患ったり、人生の転機になると、後ろの御仁も交替するのだそうだ。ケビーの場合、私の肉体が傷ついたことでダメージを受けたとのこと。そういうこともあるんだな、と、その時はそう思った。
今まで私を護ってくれてありがとう、ケビー。

02.守護霊様の話 その2

で、今私を護ってるのは誰なんだろう。それがどんな人なのか、実はもうすでに判ってたりする。ストレートに言っちゃおう。

「陰陽師やで、それもまためっちゃ美形な」

A君の話ではケビー以上に学問に秀で、術の腕もハイレベルらしい。ただ、「彼」はケビーと違い、私とのつながりがイマイチはっきり分からないのだという。「どうも何となくやってきて、興味のままに居座った」と言うのがA君の推測である。

この時、(後ろの御仁にはまたまた申し訳ないのだが)、やっぱり大笑いしてしまったのだ。なんて雅な設定! やっぱりイマドキの平安時代ファンタジーだ。「ヒカルの碁」まんまやないけ。(注:私が「ヒカルの碁」を知ったのはこの半年後でした)

今回の人は特にニックネームを決めた訳もなく、単に「後ろの人」と呼んでいる。

ちなみに、A君は私の後ろを見るのを、今は嫌がっている。なんか相性が悪いのかな〜と思ったら、
いろいろ「ちょっかい」をかけてくるらしい。どんな「ちょっかい」なのか。それは・・・。

03.守護霊様のちょっかいの話 その1

仕事帰りのA君とは、たいがい喫茶店で喋る。仕事のことから遊びの話、色々雑多なことだが、そんな時、急に私に「デコピン」をかまそうとした。別に話の内容で怒った訳ではない。その証拠に、A君は困ったような笑いを浮かべている。何事かと聞いたら、

「後ろのお兄さんがな、あんたの顔を、自分の顔にすり替えたんや」

つまり、私の顔だけが、「後ろのお兄さんの顔」になったらしいのだ。 ・・・そんなん、私知らへんやん!
それでいきなり、「デコピン」かまされても、身に覚えのない話だ。

その他にも、トイレに立った私の席に座って(不幸なことにA君の真正面だった)にっこり笑ったり、お喋りの最中、私の背後でにこにこしながら右手を差し出し、掌の上の折り鶴を炎に変えたりとかして見せている(らしい)。どうも「こんなことできますか? どうですか?」と、A君をからかってるみたいなのだ。

「にこにこしてるけど、めっちゃイケズらしい」という話だが、あんまり悪口を言うと「霊的ツッコミ」が入るので適当にやめておいた方がいいみたいだ。

04.守護霊様のちょっかいの話 その2

で、そんな話をにろにろしている時、お兄さんの顔を描いてみないか、という話になった。
「私に描けるの?」「うん、イメージしながら描いてみ?」
と言われて、メモ帳に書き始めたら、A君、いきなり笑い出した。

出来上がったのは、烏帽子をつけたちょっとごつめのお兄さん。それを見せたら、すごく納得したようにうなずいて。

「今なあ、あんたのこと、一生懸命妨害してたんやで」 と、再び大笑い。

どんな風に妨害してたのかはもちろん私には分からない。分からないが、確かに私は、一番最初に浮かんだイメージを否定しながら描いた。
「美形の平安貴族風かあ・・・ヒカルの碁の佐為に似ちゃったら、恥ずかしいなあ」と。
実際、「ちゃんと髷を結った佐為」で良かったのだ。
という訳で、私のたれぱんだ手帳には、後ろのお兄さんの顔が描いてある。希望する人には見せてあげてもいいかもしれない。

ちなみに、A君の力で、私にもお兄さんがちゃんと見えるようにしてもらえるとのこと。
「後遺症で一週間くらい、別のものが見えるけど、それでもいい?」 ・・・もちろん、丁重に断ったのは言うまでもない。

05.守護霊様のちょっかいの話 その3

話は前後するが、私の後ろの人がお兄さんになった、と分かった時の話である。
同席していたZ姐が、お兄さんのことをからかった。何と言ったかは忘れたが、たわいのないものだったことは確かだ。
Z姐の口の悪さは今に始まったことでもなく、ケビーに対しても、たま〜にヘラッと言っていた。

問題はその夜のこと。突然、彼女の片方の瞼に出来物ができて、腫れたそうなのだ。
しかも触っても痛くも痒くもない。ただ、腫れているだだったそうだ。そしてきっちり24時間後、腫れは引いた、とのこと。

霊的要素を差し引いても、不思議な腫れ物だったそうだ。

06.守護霊様のちょっかいの話 余談

そういえば、さっき話に出てきた「霊的ツッコミ」 ありゃなんじゃい、と思った方にご説明。

A君曰く「肺や心臓を直接掴まれる感覚」が、霊的ツッコミなんだそうな。

つまり、普段私たちの内蔵を守ってる皮や肉を通して、霊体が直接内蔵に触れてくるのだ。「霊的ツッコミ」はかなり苦しいらしい。さっきの似顔絵の話で、妨害してたことを笑いながらしてたA君が、突然「やめなさい」と身体を曲げてつらそうにしてるのを見ると、どんなものか察しはつく。

その時、私は正直に思った。冗談でもお化けにゃつっこまれたくないな、と。

07.友人の守護霊様の話

私のことばかり話しているが、実はZ姐の後ろの人達もかなりユニークなのだ。とりあえず条件付きでOKとれたので、今度はその話を。

Z姐の後ろの御仁。それは「武将」なのだそうな。鎧甲を身にまとい、面も覆った姿で、A君は「怖くてまともにみれない」らしい。Z姐の家筋はかなり古くから続いてる血筋らしく、その縁の人だというのだ。
表情が見えないためよく分からないが、その御仁は結構若い人らしい。力もかなり強いのだが「女子供は斬れない」(通訳byA君)というのだ。「若いからね、まだまだ甘いんや」とのこと。

さて、2,3年前、彼もZから離れる時期が来た。先にも云ったように、後ろの人達は永遠に一人を守る訳ではなく、数人が交代で一人の人間の守りにつくのだが、Z姐は泣いて嫌がった。「別れたくない」とのたもうたのだ。A君から話を訊いてすっかり愛着が沸いてしまい、別れるのは忍びなかったらしい。

そして念願(?)叶い、今も彼はZ姐の後ろに居る。

「仕事とか環境とか、あんまり状況は変わらなくなるで」とA君は言っていたが、Z姐の今後はどうなっているのだろう。

08.友人のツキモノの話

で、Z姐の話をもうひとつ。
実は彼女には、「モノノケ」が憑いていたらしい。憑いていたといっても、突然あぶらげを食べたり、いきなり周囲を飛び跳ねたりはしない。日常生活は至って平常である。

Zに憑いていたのは、イタチみたいな姿の小動物だった。「うしおととら」に出てくる「イヅナ」、あれに3〜4メートルの尻尾がついたようなものと思えばちょういい。

A君は、そのイヅナモドキを「馳尾(はせお)」と呼んでいた。

馳尾はいわゆる「厄を好むモノノケ」で、Z姐の調子が悪いと喜んでいたという。たとえば、ある日Z姐が膝の痛みを訴えていたら、「膝のところで満足そうに丸くなってるで」とA君。つまりは、そういうモノだったのだ。それでもおとなしくしていたのは、Z姐の後ろの御仁のにらみが効いていたからだという。

馳尾もまた、数年Z姐の中に存在していたらしいが、ある日、そんな話をぱったり訊かなくなった。Z姐が名古屋の友人宅へ行ったとき、コヨーテを憑けて戻った、それからだ。

今でも馳尾の話が出ると「悪ささえせえへんかったら、おってもかまわんのになあ」とZ姐は言っている。

09.いろんな守護霊様の話

A君は他にも様々な人の「後ろ」を見ている。「見える」といっても、彼には明確に全てが見えている訳ではないらしい。「こんな感じのもの」が「なんとなく」見える時もあれば、「明瞭に見える」時もあるそうだ。

たとえば「右肩から鳥の翼みたいなのが『生えて』見える」場合もあるし、「あまりにも背後が眩しすぎて、まともに見えへんねん」という人もいる。どちらにしても、私たちの見えない世界なので、想像するしかないのだが。

彼が話してくれたその中でも、一番印象深かったものがある。

ある女性に見てくれと頼まれ見てみたら、「熊のぬいぐるみ」が出てきた。それも年期の入ったもので、かなりボロボロになった状態だったという。その話をするや、突然、その女性はわっと泣き出した。
「実は子供の頃から可愛がっていた、クマのぬいぐるみがあった」とのこと。成長しても捨てられず、ずっとそばにおいていたのだが、ある時家が火事になって、ぬいぐるみも燃えてしまったそうなのだ。
「それ以来、そのことがずっと気になって仕方なかった」と、涙ながらに女性は話したそうなのだ。

守り人は人それぞれ。いろんな姿形のものが、背中からそっと見守っている。

余談・・・A君の見た守護霊モノのなかで、一番小さかったもの。それは「バッタ」だったそうだ。


TOP NEXT→